その時、私は思い出していた。
高ちゃんに雪間くんの財布を手渡して、買いに行ってもらったことを……。
(あのまま、雪間くんの財布、高ちゃんに預けたまま、教室に戻ってきちゃったんだった。)
私は、自分のあまりのマヌケさに呆れ果てていた。
だから、雪間くんには素直に謝ろうと思った。
だけど、雪間くんは、
「お前のドジのおかげで、あいつに『借り』ができちまったじゃないか。どうしてくれるんだよ!」
チッと、舌打ちしながら、雪間くんがそう言ったので、
「ドジって……。だって、これは不可抗力でしょう?そんな風に言うなんて……。」
そこまで、私が言った時、
「梶、いる?」
綺麗なソプラノ声が、雪間くんを呼ぶ。
「瑠璃さん。1年の教室に何の用だよ?」
雪間くんは、苦虫を紙屑したような顔で、声の主を見やる。
「相変わらずねぇ、梶。また、結ちゃんのこと、イジメてるの?そんな子供っぽいことはやめなさいよ。」
雪間くんをたしなめるように言う。
「説教かよ?そんなの聞きたくない。」
雪間くんは、心底、嫌そうな顔をした。
雪間くんが、『瑠璃さん』と呼んだ人は、高ちゃんの同級生の浅葱瑠璃子【あさぎるりこ】さんこと、『瑠璃センパイ』。
私は、そう呼んでいる。
雪間くんのいわゆる『幼なじみ』。
あの、雪間くんが、唯一、頭が上がらない人だ。
優しくて、さっぱりとした性格の超美人なので、男子たちに絶大な人気を誇り、女子生徒にも人気がある。
「梶、高行から聞いたわよ。また、結ちゃんをパシリに使ったんだって?そんなこと、もうやめなさいよ!」
「お前、あいつにチクッてるのか!?」
と、雪間くんが、非難する目で見てくる。
「それは、あんたが悪いの。」
そう言うと、瑠璃センパイは、雪間くんの片耳を引っ張った。
「…いたたっ……!!」
「梶、反省した?」
瑠璃センパイは、雪間くんにそう聞く。
「…分かった……。分かったから、離せって……。」
雪間くんがそう言うと、瑠璃センパイは満足気な顔で、
「よしっ!!」
そう言った。
(やっぱり、瑠璃センパイは、すごいなぁ。私は、雪間くんにあんなこと、できないや。)
私は、心底、感心していた。
高ちゃんに雪間くんの財布を手渡して、買いに行ってもらったことを……。
(あのまま、雪間くんの財布、高ちゃんに預けたまま、教室に戻ってきちゃったんだった。)
私は、自分のあまりのマヌケさに呆れ果てていた。
だから、雪間くんには素直に謝ろうと思った。
だけど、雪間くんは、
「お前のドジのおかげで、あいつに『借り』ができちまったじゃないか。どうしてくれるんだよ!」
チッと、舌打ちしながら、雪間くんがそう言ったので、
「ドジって……。だって、これは不可抗力でしょう?そんな風に言うなんて……。」
そこまで、私が言った時、
「梶、いる?」
綺麗なソプラノ声が、雪間くんを呼ぶ。
「瑠璃さん。1年の教室に何の用だよ?」
雪間くんは、苦虫を紙屑したような顔で、声の主を見やる。
「相変わらずねぇ、梶。また、結ちゃんのこと、イジメてるの?そんな子供っぽいことはやめなさいよ。」
雪間くんをたしなめるように言う。
「説教かよ?そんなの聞きたくない。」
雪間くんは、心底、嫌そうな顔をした。
雪間くんが、『瑠璃さん』と呼んだ人は、高ちゃんの同級生の浅葱瑠璃子【あさぎるりこ】さんこと、『瑠璃センパイ』。
私は、そう呼んでいる。
雪間くんのいわゆる『幼なじみ』。
あの、雪間くんが、唯一、頭が上がらない人だ。
優しくて、さっぱりとした性格の超美人なので、男子たちに絶大な人気を誇り、女子生徒にも人気がある。
「梶、高行から聞いたわよ。また、結ちゃんをパシリに使ったんだって?そんなこと、もうやめなさいよ!」
「お前、あいつにチクッてるのか!?」
と、雪間くんが、非難する目で見てくる。
「それは、あんたが悪いの。」
そう言うと、瑠璃センパイは、雪間くんの片耳を引っ張った。
「…いたたっ……!!」
「梶、反省した?」
瑠璃センパイは、雪間くんにそう聞く。
「…分かった……。分かったから、離せって……。」
雪間くんがそう言うと、瑠璃センパイは満足気な顔で、
「よしっ!!」
そう言った。
(やっぱり、瑠璃センパイは、すごいなぁ。私は、雪間くんにあんなこと、できないや。)
私は、心底、感心していた。