「蒼!?」

高ちゃんが、びっくりした声を出して、懐かしい名前を呼んだ。

「久しぶり。結、高兄。」

そう言って、蒼は意地悪そうに、ニヤリッと笑った。

(相変わらずだなぁ。)

そう思いながら、小さい頃の面影のある、その顔を見つめた。

蒼こと、『佑宇樹蒼【ゆうきあおい】』。

実は、私のもう一人の『幼なじみ』である。

そして、高ちゃんの『実の弟』でもあった。

『春名』と『佑宇樹』。

苗字が違うのは、二人の両親が『離婚』したからだった。

高ちゃんは、おじさんに引き取られ、蒼はおばさんに引き取られて、遠くに引っ越してしまったのだ。

それは、高ちゃんが6歳で、蒼が5歳の時だった。

それ以来、まったく蒼とは会っていなかった。

「蒼。お前、どうしたんだ?母さんと何かあったのか?」

そんな風に、高ちゃんが、焦って言うということは、高ちゃんも知らなかったということだ。

蒼は、不敵にニヤリッと笑うと、

「今日から、また、よろしく。」

それだけ言った。

私は、嵐の風が吹く予感がした。