ある日、私は、玄関の前で、高ちゃんとばったりと会った。

家は隣同士なので、こういうことはよくあることだった。

「結も、今、帰ってきたところか?」

「うん。」

高ちゃんが聞いてきたので、私は、すぐに返事をした。

その時に私は、ふと思った。

これは『高ちゃんの本音』を聞くチャンスかもしれない。

「あのっ、高ちゃん。待って。」

私は、自分の家へ行こうとする高ちゃんを呼び止めた。

「結、どうした?」

高ちゃんは振り向くと、私を真っ直ぐに見つめてきた。

高ちゃんのキレイな顔と瞳。

見つめられただけで、私の心拍数は上がり、胸はドキドキしている。

これから、私、高ちゃんの『本音』を聞こうとしているんだ。

そう考えただけで、また、胸がドキドキする。

「…あっ、あのね、高ちゃん……。」

「何だよ、結?」

高ちゃんは、笑顔で問い返してきた。

「…高ちゃんは、私のこと、やっぱり、『妹』としてしか見てない?」

私は、そう聞いた。

「確かに結は、『妹のような存在』だけど、俺にとっては『大切な女の子』だよ。」

高ちゃんは、そう言ってくれた。

だが、その『大切な女の子』が、果たして、『恋愛対象』のなのか、聞く必要があった。

私がよく知る高ちゃんだからこそ……。

「高ちゃん、それは『どういう意味』?」

私がそう聞くと、高ちゃんは不思議そうな顔をして、

「どういう意味って、もちろん、『幼なじみ』としての『大切な女の子』だよ。」

そう笑顔で言った。

そうか……。

やっぱり、そうなのか……。

『幼なじみ』としての『大切な女の子』。

高ちゃんにとって、私は、『恋愛対象』ではなかった……。

いきなり『告白』なんてしないでよかった……。

フラれるのは目に見えてる。

私が、そんな風に思っていた時だった。

急に高ちゃんが、びっくりした声で、その懐かしい名前を呼んだのだ。

「蒼!?」

私が、気づいて振り向くと、銀縁メガネをかけた超美青年が、大きな鞄を片手に持って、そこに立っていたのだった。