体育祭が近づいて、みんなは放課後、練習をしていた。

高行は、運動神経がとても良いので、リレーのアンカーになっていたのだ。

私も、みんなと練習をしていたのだが、高行がちっとも現れなかった。

見かねた先生が、

「おい、浅葱。春名を呼んでこい!」

そう言ったので、私は、高行を探しに、校舎内に行った。

そしたら、高行とショウが、保健室に入って行くのが見えた。

私は、保健室に向かって、今、その扉の前にいた。

そして、まさに扉を開ける瞬間、驚きの一言をショウが告げた。

「好きです。」

そう高行に……。

私は、呆然と、扉の前に立ちつくして、その『告白』を聞いていた。

まさか、ショウが高行のことを好きだったなんて……。

正直、驚きすぎて、言葉にならなかった。

『男同士』とかいう『嫌悪感』は一切なかったが、私は、とにかく驚きを隠せずにいた。

私は、二人には悪いと思ったが、『盗み聞き』していた。

高行がどんな『答え』を出すのかが、どうしても知りたかったのだ。

私は、てっきり、高行は『断る』とばかり思っていた。

だが、高行の『答え』は、意外や、『考えさせてくれないか?』だった。

律儀な高行にしては珍しい。

高行は、あまり『期待を持たせる』ような『返事』はしない。

『断り方』は、女の子たちを傷つけないような『言い方』をしていると聞いた。

それは、高行なりの『優しさ』と『思いやり』なのだろう。

高行はショウの、その『真剣な告白』に少しでも心を動かされたのだろうか?

私は、自分が情けない気持ちになってしまった。

ショウは『男』だが、勇気を出して、高行に告白した。

女の子たちが告白するよりも、もっと、いや、たぶん、かなりの勇気が必要だと思った。

ショウが、いつから高行のことを好きだったのかは知らない。

いや、そんなことすら、気づかなかった。

きっと、親友である『梶』さえも知らない、ショウの『秘めた想い』……。

でも、ショウは、その想いを高行に伝えた。

その時、私は、『覚悟』を決めた。

私も、高行に『自分の想い』を伝える。

いや、『伝えたい』……。

私は、そう思い、そっとその場を後にした。