体育祭が近づいてきて、みんなは、放課後、練習していた。

だが、俺は、まだ教室にいた。

日直だったので、遅れたのだ。

雪も教室にいた。

だが、体操着に着替えもせずに、スタスタッと歩いて、カバン片手に教室を出て行こうとする。

「おい、雪!どこ行くんだよ?」

俺がそう聞くと、雪は、

「帰るんだよ。こんなの面倒臭い。」

そう言って、帰ろうとする。

(相変わらずだな。しょうがない、ここは……。)

「雪。結ちゃん、これから走るみたいだよ。」

と、窓の外を見ながら、俺は、雪にそう言った。

すると、雪は、窓のほうに駆け寄ると、結ちゃんが走っている様子を眺めている様子。

「お前、ホントに結ちゃんのこと、好きだね。」

そう言って、茶化す。

「…うるせーよ。別にいいだろ?」

俺の前だけでは、あの雪が、素の真っ赤な顔をする。

雪は、意外と『純情』な奴だった。

(…まっ、そんなとこがまた可愛いんだけどな。)

そんなことを俺が考えながら、雪と雑談していた時だった。

突然、教室の扉が開き、女子生徒が中に入ってきた。

その女子生徒は、クラスメイトの『飯沼さと美』だった。

だが、何だか、バツが悪そうにしている。

そこへ、飯沼さと美の後ろから、声がした。

「どうした?誰かいるのか?」

その声を聞いた途端、ドクンッと胸が高鳴り、俺の心拍数が跳ね上がる。

春名先輩だった。