『アイツ』とは、私の『幼なじみ』。

『三枝昴【さえぐさすばる】』。

現在、15歳。

中学3年生。

一つ年下の昴は、バレーをやっているせいか、やたらと背が高い。

だって、今でも、178cmあるんだよ。

どんだけ、背が高いのよ。

私が、雪間くんに『恋』してることも知っていた。

そんな昴が言ったのだ。

『ただ見てるだけじゃ、ちーの気持ちは伝わらないぞ!』って。

だから、私は、一大決心をして、雪間くんに告白することにした。

『フラれる』ことは分かっていたが、きちんと自分の気持ちを伝えたかった。

だから、雪間くんを呼び出して、私なりに、

「雪間くんのことが好きです!」

私は真っ赤な顔で、そう伝えた。

だが、雪間くんは、面倒臭そうにため息をつくと、

「…悪いけど、俺、『不細工』とは、『付き合わない』から……。っていうか、迷惑。」

あっさり、バッサリ、そう言うと、私の一大決心の『告白』を打ち砕いた。

噂では、かなりの『毒舌家』とは聞いてはいたけど……。

まさか、ここまでとは……。

私は、呆然とそこに立ち尽くしていた。

すると、雪間くんは、

「もう用がないなら、俺、行くわ。」

そう言うと、さっさとその場から立ち去ってしまった。


私は、家に帰ってきていた。

ガバンも持って帰らずに……。

それほど、ショックが大きかったのだ。

『フラれてしまった』こともそうだが、『好きな人』に『不細工』と言われてしまったショック……。

そのことのほうが大きかったのだ。

だが、不思議と涙は出てこなかった。

たぶん、あまりにもショックが大きすぎたのだろう。

自分のベッドに横になり、いろいろと考えているうちに、私は寝てしまっていたようだった。

起きると、日も暮れていた。

その時、ガチャッと突然、私の部屋の扉が開いたと思ったら、昴が入ってきた。

「ちー、何してるんだよ?もう夕飯の時間だぞ。」

そう言うと、昴は、デカイ身体で、私に抱きついてきた。

『昴の恒例の甘え方』

それは、私と昴との間の『日常』となっていた。

昴は、こんなデカイ身体だが、甘えん坊で、手がかかる。

そんなところは、身体が大きいとはいえ、まだまだ、15歳なのだ。

でも、意外としっかりしたところもあって……。

だが、今日だけは違っていた。

私は、昴に抱きつかれた瞬間、不覚にも泣いてしまっていた。

「…ひっ……。ふぇぇぇぇ~ん!!…すっ…昴~!!」

「…ど、どうしたんだよ?ちー?」

さすがの昴も、私が、こんな風に泣くとは思わなかったのか、驚いた口調で、そう言った。

私は、昴の胸にすがりながら、泣き続けた。

思いっきり……。

そしたら、昴は、優しく、抱きしめてくれたのだった。

いつもは抱きつかれるだけだったが、昴の胸の中は、意外と温かい。

そして、安らぐ……。

昴は、私が泣き止むまで、抱きしめ続けてくれたのだった。