「ただいまー...」
校舎裏で寝てしまったことについてくよくよ考えながら上の空で帰ってきたので、学校から家まで瞬間移動してしまった気分だ。
「お帰り〜♪遅かったのね〜」
「...まぁねー...」
お母さんが陽気に話しかけてくる。
「彼氏とデートでもしてたのかぁ〜?」
「っ!お兄ちゃん何言ってんの!んなわけないでしょーが!!」
居間でくつろいでいた兄に茶化される。
うちの家族は、父、母、兄、私の4人家族だ。
兄とは2個違いで、お父さんは単身赴任で1人関西に出ている。
「「ふぅーん?」」
お母さんとお兄ちゃんの返事がぴったり重なった。
「なんなの、息があいすぎなんですけど!」
怒鳴って頬を膨らませた。
なにこの2人。
ハァ。
ただでさえあんなところで寝ちゃって落ち込んでるのに。
なんなのもう。
「じゃあ何してたんだよ」
「...」
答えたくない。
『綺麗な歌声を聴いていたら寝ちゃいました』、なんてうっかり口にしたら、またからかわれるに決まってる。
それと、私だけの秘密を誰にも教えたくない。
私のほっぺは膨らんだまんま。
「ほら、答えらんねぇじゃん」
「...違うもん!居残りだもん!」
もうなんでもいいや、とユキに言ったことと同じことを言い、ドタバタと2階にある自分の部屋に向かった。
「ルナ、ごはんは食べるのー?」
途中、階下からお母さんに訊かれる。
「着替えてから食べる!」
やっつけで答えた。