あの日は雨だった。
逃げ出してきた私はただ行く先もないまま歩いていた。
夜遅い時間に傘も差さずに歩く私を、周りの大人達は振り向くばかり。
携帯を触る大人を見ると、震えが止まらなくなる。
このまま警察に通報されて、またあの家に戻されるのか。両親が亡くなったあの日から、私の人生はもう終わりだったんだ。
「どうしたの、大丈夫?」
突然雨が止んだかと思うと、傘を差した1人の女性が私の目の前にやってきた。
「お父さんとお母さんは?」
私が小さく首を振ると困ったように携帯を取り出した。
「だ、だめっ」
警察に連絡されちゃう、そんなことしたら私は…
「お願い、警察だけは…」
一瞬驚いた様子だったけれど、何かを察したかの様に携帯を仕舞い、私の手を取り歩き出した。
「ど、どこ行くの…」
「風邪ひいちゃうでしょ、私の家においで」
これが彼女との出会いだった