しかもぶつかった時、お客さんの持っていた雑誌がバサバサッと落ちてしまっていた。
「あっ…すみません!」
私は慌てて拾おうとしゃがみ込んだ。
「いえ…俺もきょろきょろしてたんで」
そう言って帽子を被った、若そうな男のお客さんもしゃがみ込んだ。
一冊…二冊…三冊目の雑誌を手に取ろうとした時、
「……あっ……」
互いの手が触れて二人は同時に手を離す。
「すみませんっ……」
と、同時に二人は顔を上げる。
「……あっ……」
あれ…?
この人……?
私のちょっとした疑問がよぎった時…相手の男の人が三冊目の雑誌を拾っていた。
「すみませんでした、ありがとうございます」
「あっ…いえ、こちらこそすみません」
お互いに一礼して、お客さんは私の横を通り過ぎていった。