そして、ある日の週末。
咲の仕事終わりに、勇介は咲をディナーに誘っていた。
きらびやかな、落ち着いた店内。
「勇介くん、やっぱりおしゃれだよね?女の子でもなかなかこんな店知らないよっ」
「ははっ、またそれー?だから違うって~」
すると勇介はいつものように笑って、
少しうつむいて言ってきた…。
「だからー…今日は本当に特別っ」
「…えっ…」
そして勇介は、咲の瞳を真剣に見つめる。
「咲っ…大事な話があるんだっ…」
「…えっ?…なに?」
グラスを持っていた咲の手が止まる。
「俺っ…転勤することになったんだっ…」
「……えっ?転勤…?」
「…うんっ」
「どこ…に?」
「神戸っ」
「……神戸っ、また…遠いんだね?」
「うーん…本当は少し前から聞いてて、
どうしようか悩んでた…いろいろと…」
「……。」
「来月には、もう…行かなきゃいけないんだっ」
「来月…って、もう二週間後じゃ?」
「ふふっ、そうなんだよね?マジで困ったよねー?」
笑いながらそう言った勇介に、咲が何も言えずにいると…。