「廉…く…ん…?」
まさか…
ウソだよね…?
こんな所に…
でもっ…。
咲が、ただその場に佇んでいると、
「咲っ?」
「……っ」
勇介の声にハッとして、咲は我に帰る。
「あっ…ごめんっ」
勇介は、廉が去って行った方を見る。
「……誰か、いた?」
「えっ……ううんっ」
咲は、勇介に笑顔を向ける。
「そっか?じゃぁ…行こっか?」
「うんっ…」
そう言って2人は、勇介の車に乗り込む。
隣で、いつものように話す勇介の言葉にも…
咲には少し…上の空だった。
ーー
そして、自宅に帰った廉はため息をつく。
「ふぅー…」
帽子をポンッと置き、廉はソファーに座り頭をぐしゃっとする。
「……そっかぁー」
そっかぁ……もう…
彼女には、新しい彼氏(ひと)が…。
「俺っ…バッカだなぁー…」
髪を少し引っ張り、
少し涙声で呟く廉…。
「今更…後悔なんて、俺っ…」
頭を抱える廉の向こうには、
咲が好きだと言った夜景が、
キラキラと輝いていたー。