リビングに入ると、廉が口を開く。


「あっ…何か、お腹空いたよね?」


「えっ?あー…そういえば」


「俺なんか作るから、咲ちゃん座ってて?」


「えっ…」


そう言って廉は冷蔵庫を開き、頭を掻く。


「あー…なんか、微妙…」


そんな廉の姿を見て、咲はクスッと笑う。


「えっ…?」


廉は咲の方を振り向いた。


「あっ…ごめん、だって廉くん何かすごく慌ててるから…」


「えっ!?そ…そうかもだけど……だとしたら、咲ちゃんのせいだよ?」


照れながら視線をそらす廉。


「えっ!?私っ!?」


「咲ちゃんが俺の部屋にいるってだけで、俺…なんか緊張っていうか…ほとんど強引に連れて来ちゃったし…今更俺、何してんだっ…みたいな…」


「廉くん…」


「でも、何か咲ちゃんに笑われると…ホッとする、カッコ悪い俺でもいいのかなって…」


「………っ」


廉の言葉に咲は、廉の目の前に行き、
膝を着いて廉の手を握った。


「廉くんがカッコ悪いなんて…一度もないよ?
そのままの廉くんが…好きっ」


「咲ちゃん…」


そして咲は、廉の後ろの冷蔵庫の中身を見る。


「あっ…でも、なんかいけそうだよ?」


「えっ?…そう?」


「うんっ、炒め物ならっ」


「そっか…」


「私…良かったら作るよ?」


「えっ…でも、こないだも作ってもらったし…」


「気にしないで?たいした物じゃないし、それに…好きな人に食べてもらうのが嬉しいから…」