廉がその人影にそっと近づくと、
すぐにその人が誰なのか気づいた。


「…咲ちゃん…」


廉の呼びかけに、咲はビクッとするも…
振り向かないでいた。


廉は咲のすぐ後ろにまで行った。


「咲ちゃん…でしょ?」


「……っ…」


咲はうつむいたまま、まだ振り向かない。


廉が咲の隣に近づこうとすると、


「……見ないでっ」


「……えっ?」


「お願いっ、今は…ちょっと…」


「……咲ちゃん?」


廉は咲の肩に手を置き、
振り向かすとー。


「いやっ…」


咲は顔を隠す。


「咲ちゃんっ!」


廉がそっと咲の手を下ろす。


すると、咲の頬には…涙が流れていた。


「やっぱり…泣いてたんだね?」


涙顔で、そっと廉を見る咲。


「どうして…ここが…?」


咲の言葉に、廉は眉を下げて…。


「思い出の…場所だから、もしかして…と思って」


「…そっか?」


廉はそっと、咲の涙を拭った。


「とにかく…座ろう?」


咲がうなづき、2人は街灯下のベンチに座る。


「廉くん、ごめんね…連絡返さないで、私……」


そう言って、咲が言葉に詰まる。


廉はゆっくり首を振る。


「ううんっ…」


廉は、それだけ言った。