それから、数日。
話は突然、咲の元へやってきた。
出勤するなり、咲はすぐに店長に事務室に呼ばれた。
「星野…おまえに、大事な話がある」
「…はい?」
「最近…うちの店の近くに車が停まってたりすることが多くなった」
「…えっ…」
「多分…あれは、週刊誌とかのだろうな…」
「……っ」
「それを、なんでおまえに話すのかと言うと…」
そう言って店長が出したのは、注文ファイルの中の一枚。
そこに書かれていたのは
“白石廉”の名前だった。
「…あっ…」
思わず声を出してしまう咲。
「白石廉が、お客だったのは知ってた……が、
こういう事になってしまうと…少し店としては悩ましくてな?」
「…えっ?」
「ちょうど、人事の者がいた時に話した結果…」
「……っ…」
店長は言いづらそうにしている。
「……星野には、店を移動してもらうことになった」
「……えっ…」
移…動…?
咲は頭が真っ白になり、うつむく。
「……悪いな?店としてはそういう噂が広まっていくと…おまえも辛いだろ?」
店長は眉を下げて言ってくる。
「すまない…決定事項なんだ、20日で新しい店に移動してもらう」
「……はい」
「安心しろ…他の従業員や、移動先にも、“経験積みの為”と説明することになってる」
店長の言葉に、咲は静かにうなづいた。
「……ありがとうございます、ご迷惑かけて…すみませんっ…」
咲はそう言うと、頭を下げて事務室を出た。