「…もしもし?」


『あっ、咲ちゃん?』


「うん…」


『今、仕事終わった所?』


「うん、今バス待ってる…廉くんは?」


『うんっ、俺も終わってもう家なんだけど…』


「…うん?」


『咲ちゃん…良かったら今から会えない?外で…』


「……えっ?」


『俺が迎えに行くからっ』


……“迎え”……


咲はハッとする。


「……ごめん、廉くん…」


『えっ…?』


「今日はちょっと…行けないかも…」


『…そっか?そうだよね?ごめんっ…突然…』


「…ううんっ、ごめんね?」


『いーよ、気にしないで?』


「うん…じゃぁ、また…」


『うんっ、また…』


電話を切る咲に、望が突っかかる。


「なんで断ったのよ?咲っ、あんまり会えてないんでしょ?」


「……うん、でも廉くんにあんまり無理させられないし…」


「えー?なにそれ~?もったいなーいっ」


そう言った望に薄っすら笑みを返すと、
咲達はバスに乗り込む。


窓からの景色を眺めながら、咲は思った。


だって…もしかしたら、
あの車、私のアパートに来るかもしれないっ。


そしたら、廉くんの写真が撮られてしまうかも


それは…ダメ。


咲は眉間にシワを寄せてうつむいた。