『バスで帰ったし…大丈夫だったと思うけど…?』
「本当?良かったぁ…」
『廉くん、そのっ…変な車ってもしかして…』
咲がそう言い続けようとして、唇を閉じた。
「咲ちゃん…?」
『あっ…ううんっ、なにもっ…』
「……そっか?」
電話の向こうで廉もうつむく。
「おかゆ…ありがとう」
『あっ…ううんっ』
「うん…じゃぁ俺、仕事だからそろそろ支度するね?」
『うん、私も…お昼から仕事だから』
「うん…じゃぁ…」
『あっ…廉くんっ』
「…ん?」
『あの…無理しないでね?』
「……うん、ありがとう」
廉の言葉に咲は首を振り、
「じゃぁ…また」
『うんっ、またね?』
2人は電話を切る。
「…廉くん…」
ーー
その日から、
咲は心の中に…少しザワついた気持ちを抱え始めた。