「…かなり熱があるっ…」


「うそっ?じゃぁ俺、廉くんのマネージャーに連絡してくるっ」


「頼むっ」


携帯を持って、拓海が一旦スタジオから出て行く。


「廉っ、帰る支度するぞ?…三井さん、廉は今日はもう…」


江真はそう言って三井にゆっくり頭を下げる。


「…分かった、しっかり休めよ?廉っ」


「いやっ…俺は本当にっ…」


「ダメだっ!こんな状態の声で作品を作っても、誰も納得しないだろ?」


「…江真…」


「分かってるだろ?おまえだって…」


江真の言葉に廉は静かにうなづいた。


「悪いっ…」


廉の言葉に、江真は笑顔で廉の肩を叩く。


「気にすんなって…しっかり休めよ?」


廉は薄っすら笑顔を江真に返した。


そして、廉のマネージャーが他の打ち合わせに出てる為、すぐにこっちに来れそうになく、拓海が廉を送ることになった。


「悪いな?拓海っ…」


「いーって?」


タクシーに廉を乗り込ませると、廉の服のポケットから、携帯が車のシートの足元に落ちた。


「あっ…廉くんっ」


「…ん?」


「……あーいやっ、何でもっ、ちょっと待ってて?」


「……?うん」


拓海は廉の携帯を持って、タクシーから少し離れた所で、勝手に電話をかけた。


その相手は


プルル…プルル…


「あっ!もしもし?咲ちゃん?俺~拓海だけどっ」


『……えっ!?拓海くんっ!?…えっ…あのっ…これ、廉くんの携帯じゃ…?』