「……っ!」


「うちの事務所は恋愛禁止ではない…が、今やおまえは国民的アイドルグループRetの一人だっ」


廉はシワを寄せたまま、うつむいていた。


「…これ以上は聞かないが、しばらくおまえに決め事をつけるっ」


「……えっ?」


社長の顔を見る廉。


「ほとぼりが冷めるまで、一人での帰宅を禁止するっ、必ずマネージャーに送らせる」


「えっ?…なんで?」


「おまえの住んでるマンションが一番危険だろ?一人で帰るのをやめてもらう……それだけだっ」


「……っ…」


廉の手に力が入る。


「……守れないか?」


社長は真剣に廉の目を見る。
その視線に廉も社長を見て、ゆっくり口を開く。


「……分かりました、一人では帰りません」


廉の言葉に社長はホッしたように息を吐く。


「…よしっ、話はそれだけだ、呼び出して悪かったな?気をつけて行けよ」


「…はいっ」


廉は頭を下げて社長室を出る。


少しうつむいていると、マネージャーが近寄って来る。


「廉くん、話終わった?」


「あっ…うん」


「……詳しい事は聞いてないけど、今日から家まで送り届けるからっ」


「…うんっ、ごめん…よろしくね?」


「いえっ…僕は全然っ……じゃぁ、仕事先に向かいましょうか?」


「うん…」


少し足取り重く…廉は仕事に向かった。