「そんなことっ…」


「咲ちゃんが困りそうだって分かってるんだけど、俺…ダメみたいっ…」


「…えっ…?」


そう言って咲が廉の顔を見上げようとすると、廉の手が咲の頬に触れる。


咲がドキッとする暇もない程、
廉の唇が咲の唇に何度も触れる。


「廉くっ…ん…」


唇が離れて、咲が廉の名前を呼ぼうとする度、廉は咲の唇を塞ぐ。


「……っ…」


ダメ…廉くん。

頭が…クラクラする。


とても…何も考えられないっ。


そして、ゆっくり廉の唇が離れる。


ポーッとした咲が、とろけた顔で廉を見つめる。

そんな咲にドキッとして、廉は目をそらす。


「ご…ごめんっ…」


そう言って、廉が立ち上がる。


「…えっ…?」


廉は赤い顔で頭をかきながら…。


「本当に…止まらなくなる所だったかも…」


「……っ!」


廉くん…?


「でも…やっぱり、自分の気持ちだけで突っ走っちゃダメだよね…」


「…えっ……あのっ…」


咲がそう言いかけた時、廉の携帯が鳴る。


「あっ…ゴメン、ちょっと友達からみたいっ」


「あっ…うん?」


廉はそう言って窓辺の椅子に移動して行った。


咲は一人、その場に座ったままで少しうつむいた。