「うん、渡したい物もあるし…じゃ?」
少し照れながらそう言うと、廉は足早に出口に向かって行った。
咲はとまどいながらも、ドキドキしていた。
本当に待ってるの?廉くん…。
咲はそわそわしながら、仕事を片付ける。
そして終礼を終えると、
咲は少し慌てて帰り支度をした。
ミラー前で髪の毛のチェックをしてロッカールームを出ようとする。
「お疲れ様ですっ」
と、その時。
「星野っ」
その声にビクッとしながらも、咲が振り返る。
「は……はい?」
咲が振り向くと、笹原が珍しくすでに帰りの支度をしていた。
「今日…送ってやるよ?」
「…えっ!?」
「俺昨日休みだったし、あんなチョコでも一応お返しした方がいいだろ?」
「あ…いやー…」
もしかして笹原さん、ホワイトデーの事言ってる!?
「あっ…あの、大丈夫です」
「はぁ―?何言ってるんだよ?上司の俺の誘いを断るってのかっ?」
笹原は咲に顔を近寄る。
「あっ…いや、でも私予定があるので…」