廉の声に、咲はまだ起きない。
そっと廉の視線が、咲の顔の……まぶた、 鼻、
そして…廉の視線が、咲の唇に映る…。
少し体を斜めに向ける廉。
そっと…咲の唇へ……廉の顔が近づいていく。
と、その時。
再び対向車のライトが2人に当たり…廉の動きが止まった。
ハッ…として、廉がすぐ前に向き直す。
そして、ハンドルに手をついて廉はうつむいた。
「何してんだ……俺っ……」
廉がボソッと呟いた時、
「…ん…?」
「………っ!?咲ちゃん…?起きた?」
「廉くん?……えっ!?ゴメンっ!私寝てたのっ!?」
「あっ…うん、気持ち良さそうだったから、どうしようかと…ね」
「ごっ…ゴメン!ごめんなさいっ!! 」
咲は何度も頭を下げる。
「えっ?いーよ、そんな謝らないで…何か、ちょっと嬉しかったし…」
「えっ…?」
「あっ…いや、俺の運転居心地いいのかなって?」