そして2人は券を買って、中に入った。
公開からしばらく経っているこの映画の観客は、他に比べて少し少なかった。
少ないは少ないで、どうなんだろう?
“白石廉”ってバレないかな?
「…大丈夫かな…」
咲がボソッと呟く。
「ん?どうかした?咲ちゃん」
「ううん、何でもないっ」
「ははっ、もう始まるよ?」
「うんっ…」
ふぅ―…と息を吐いて、咲はスクリーンに目を向ける。
……ん?
ちょっと待って?
私……そんな心配してる前に、廉くんが隣に普通に座ってる事気にしないでいいの!?
いや…映画館だから、隣に座るのは当たり前なんだけど、
ジュースホルダーに入ってる2人の飲み物を見て、咲は胸を押さえた。
今更緊張してきた…。
そう思ったのも束の間、映画が上映し始めた。
2人が選んだ映画は、基本アクションものだけど、洋画なだけあってラブシーンもちょこちょこ出てくる。