「バカみたい……私……」


そしてもう一度携帯の画面を開いて、廉への返信を打つ。


《 廉くん、お疲れ様。

遅いみたいだから、今日はやめるね?

それに今日はもう遅いし、帰り私の家寄っていかなくても大丈夫だから。

仕事頑張ってね。 》



やっぱり、もう…“家”
はダメだよ。


友達だから、そこまでさせるわけにはいかない…。


メールを送信すると、その親指に雫がこぼれた。


「……っく……ホント、バカ…」


そううつむいた時、
ガチャ…と裏口のドアが開いた。


「うぉっ…おまえ、まだいたの?」


笹原が店の鍵を閉めて、最後に出てきた。


笹原の声に、咲はゆっくり振り向く。


その瞬間…通りすがった車のライトが咲の顔を照らす。