「でもさ、店の男の人には女性社員全員が出しあってチョコ渡すんだってね?」
「あ―…うん、お店はね」
「職場だから仕方ないよね~?」
「まぁーね…?」
「あ~でもホントは好きな人に渡した~いっ」
「あ―…」
それって……拓海?
「ねっ?咲っ」
「えっ?」
「だから、好きな人にっ」
「えっ…?いや、だから私はっ…」
「“好きな人なんていないしっ”!」
自分が口にしようとした事を、望に先に言われる咲。
「うっ…」
「はいはーい、そう言うと思った!」
「あのねぇ―?」
「あっ…ヤバイ、私もう行かないとっ」
そう言うと、望は立ち上がった。
「え~?ちょっと…」
「じゃあ~ね~」
ドアを閉め、望は先に出て行った。