「もうやめてあげなよ!」



その、ひと声だけが教室中に響いた。


奴らに向かって言ったのは、正義派の如月美月(きさらぎ みつき)さん。

美人で誰にでも優しい、男女ともに好評価の人で私もすごく尊敬している。


だけど…馬鹿だなぁって思う。

どうして、そんな危険まで起こしていい人になるのか理解出来ないから。


「またまた~美月ったらうっさいなー!」



小学校からの仲なのか、杏珠は如月さんに強く当たらない。


「…毎回言ってるけど、もういい加減やめよう。」

「うっさいなー!なんや?美月に迷惑かけてへんやんか!」

「杏珠もそうやけど、千聖に優も正直酷いことしてるって自覚あるやろ?
もうやめようや、こんなこと…。」

「酷いことしてるって自覚あるで。
だから楽しいんや。」

杏珠の言い分にその、大きな瞳をこれでもかっていうくらい見開けた如月さんは、「杏珠!最低やん。なんであんた変わったんよ。」と。

「変わったんとちゃう!うちはなんも悪うないわ!
美月嫌いになりたくないからこれ以上言わんといて!早うどっかいけ!」

「…なんやほれ。」

如月さんは、そう言い残して吉野さんを追いかけるように教室から出て行った。


はぁ、とため息つく杏珠に「なんで美月にこだわるん?うち、ウザいんやけど。」と千聖が耳打ちした。

「やめてーな、うちの大事な友達やで。」

「…チッ。」

「おい」

「ごめんやってー!」



と笑い合う奴らは本当に狂ってる。
見放す私も含めて、狂ってる。