部活に行く気力は無かったけどジッとしていられなくてプールサイドにいた。


「高瀬!」

「た……高岡くん!!」


振り向けば松葉杖をついた高岡くんが笑顔で私を見ていた。


「松葉杖……」


足の包帯も松葉杖も彼の怪我の重症さを表していた。
目の前が真っ暗になりかけた時、それを振り払うように明るい声が向けられる。


「あぁ!
ただの捻挫だけどよ~早く治してぇから借りてきた!」

「捻挫……」


その言葉に心なしかホッとする。


「何だよ捻挫かよ~」

「心配して損した!」


部員たちがザワザワと騒ぎ出す。


「いやいや心配しろよ!」


高岡くんは笑顔ではしゃいでいたけどどこか無理している様にも感じた。


「高岡くん……。
ごめんなさい私のせいで」

「あのな~。
本当に馬鹿だな……お前は!」


謝れば高岡くんは大袈裟にタメ息を吐く。
そして真剣な目つきで私を見てくる。


「お前は被害者なんだ。
むしろ俺のせいで怖い思いをさせちまった。
本当にすまなかった」


謝らないでよ。
謝られたら私、どうしていいか分からない。


「高岡くん……」

「なぁ笑ってくれねぇ?
俺さ……お前の笑顔が見てぇ!」

「っ……」

「なっ!
頼むよ!お前の笑った顔を見れば直ぐにこんなもんよくなるし!」


高岡くんの笑顔に目頭が熱くなりながらも必死で笑顔を作る。


「ありがとう……」

「おう!お前が無事でよかった!」


高岡くんの笑顔が眩しい。
本当にありがとう。