「ありがとう」と、手渡す。
あれ。これ返して良かったのかな?
何も考えないで飲んじゃったけど。
「口つけていい?……俺、そういうの平気だけど」
「あ……うん」
「なんか幸せそうな顔してたね。なんの夢見てたの?」
そういって、ペットボトルに口をつけた。
……隼人くんとキスした夢、なんて言えない。
しかも、中三の別れ話をしたときの光景で、すごくリアルだった。
「忘れちゃった」
「そう。体調、大丈夫?体育館まで少し歩くから落ち着いてから行ったほうがいいよ」
体育館……。
そうだ。バスケの応援に行く約束してたんだった。
「大丈夫。もうバスケ始まってるかな?」
「たぶん始まってると思うけど」
「ごめんね。隼人くんずっと待ってたんだよね。ごめん」
「ううん。高塚の寝顔、たまに見ると面白かったから退屈じゃなかったよ」
「……いちばん見られたくなかった」
隼人くんは立ち上がると、わたしに手を差し伸べた。