わたしって、絶対バカ。


よく考えたら杏奈にいいようにおつかい頼まれたようなものだし。


でもまあ、いつも杏奈には迷惑かけてるしこのくらい、いっか。


教室に帰ったら、杏奈に「どこが生まれ変わったの?」と言われるに違いない。


ハァ。


購買部の前の廊下のベンチ。


市ノ瀬くんが厚手の少年漫画雑誌を座って読んでいた。


……あ。


声、かけてみようかな。


やっぱり、やめようかな。なんか悪い気するし。


隼人くん以外にだって、ほらやっぱり声かけれない。


それにしてもすごい熱中してるな。


好きなんだろうな、その漫画。


購買部でジュースを買って、ベンチの前を通り過ぎようとすると、


「羽麗ちゃん?」


と、声をかけられた。市ノ瀬くんだった。


「えっ?さっきもここ通った?」


軽く頷く。


「本当に?声かけてよー。恥ずかしいじゃん」


「……」


「いや責めてないからね?」


頷いてから、


「……何読んでたの?」


と、訊いた。