「わたし、生まれ変わったんだ」


「はっ?どこが?」と呆れるような目で杏奈は言った。


「隼人くんと、ちょっと話せたの」


「まじで?」


「まじで」


「これでわたしもあんたの裏家業代理から解放されるわ」


「裏家業って、声大きい」


杏奈はドアのほうに目を向けると、「今隼人くん戻ってきた」と小声で言う。


「話したいとこ見たいから、購買部でジュース買ってくるついでに声かけてきなよ」と、小銭をわたしに握らせた。


「……いっ……いいよ」と、立ち上がり隼人くんの席の前を通る。


目があったら、挨拶するんだ。


昨日は出来たんだから。


そう思ってチラリと隼人くんのほうに視線を向けたけど、俯いて座っているものだからまったく目があわなかった。


それでも、声をかければ、きっと……。


そう思ったのに、声なんかかけれなくてそのまま廊下に出てしまった。