普通にしてみよう。


挨拶なんて出来ないけど、せめて顔を上げて前を見て歩いてみよう。


真っ直ぐは見れないから、奧にある階段に視線をあわせ歩いた。


それでも視界の中に隼人くんがいて、少しずつ近くなるのがわかる。


俯きたくなる。


わたしの悪い癖がでそう。


大丈夫と言い聞かせてるけど、心臓の音が半端ない。


誰かに聞かれちゃうんじゃないかって。


手汗、ひどい。


でも、大丈夫。


すれ違った。


足音が遠のいていくのがわかってから、足が震えてきた。


……でも、できた。


これだけのことだけど、わたしにとっては凄く大きなことだった。