「市ノ瀬のこと、考えてたでしょ?」
目を開けると、口角を上げてわたしを見つめる隼人くんがいた。笑ったというより、笑ってるように見せたい。そんな顔だった。
「……え」
「キスされると思った?」
「……」
「高塚の泣きそうな顔、何回見てきたと思うの?そんな顔してるのに、出来るわけないよ」
「隼人くん?」
「元気ないの、気づいてたよ」
何を言うの?
「今日さ、空元気っていうか、無理に明るくしてる気がしてさ」
何を言うの?
「なんとなく気にはなってたんだけど、スマホ見てから表情変わったから、余計にそう思ったよ」
ううん。何を言わせてるの?
「高塚、やっぱりさ」
「隼人くん」と、言葉を遮った。