「俺さ、そうやって怒ってもいいと思うよ」


「……」


頭でわかっていても、出来ないことってあったりする。男子と話さない。怒れない。そういうの、やらないと段々とわからなくなる。


気持ちとか感情とかそういうのと、表情や態度が違くなったりしちゃうことに馴れちゃうと、出来なくなる。


感情に任せなければ、周りに迷惑をかけないし、かっこ悪い自分にならないですむんじゃないかな。


「じゃあさ、こうしようよ?誰かに頭にきたとき、本人に怒れなかったら、俺に怒るってどう?」


「市ノ瀬くんに怒る?」


「うん。俺に怒る」


「それって、八つ当たり……」


「うん。八つ当たり。俺もそう言いながら、本当は怒られるの嫌いだから、もしかしたら怒り返すかもしれないけど……そしたら喧嘩すればいいだけだし」


「変な喧嘩だよ。喧嘩する必要ないのに」


「必要あるよ。羽麗ちゃんがちゃんと怒れるようになる為の喧嘩だよ。羽麗ちゃんが『怒って良いって言うから怒ったのに、逆切れするなんて有り得ない』なんて言って、俺が『俺は気が短けーんだよ。仕方ねーだろ』なんて逆切れして……ほら考えてみたらバカバカしいね。喧嘩ってさ。大したことじゃない」


想像したらクスリと笑えた。