それから、杏奈に教えてもらったことを思い出した。来月はバスケのインターハイの県予選があるらしいから、応援行けば?とか、言われたんだった。
同時にまた見てみたいな、と思った。市ノ瀬くんの試合。確か、土曜日から月曜日の日程だったから、杏奈の言う通り応援に行けないことはない。
でもそんなことしていいのかな。
定期戦のときみたいに誘われないと、行っていいものか判断がつかなかった。
「市ノ瀬くん」
「ん?」
「ら……来月、インターハイの県予選って本当?杏奈から、聞いて」
「あっ、うん。そうだよ」
「そっかぁ、が、頑張ってね」
「うん。ありがと。頑張る」
「応援してるから」
そう言いながら、誘いの言葉を待ったけど、言う気配もなく、この前の練習試合の話を笑いながらしてくるだけだった。
やっぱり行くの迷惑かなと、頭の片隅に置いた言葉のせいで、会話に集中できない。
段々と日は傾いてくる。
わたしに帰りのバス時間の確認をすると、「もっと一緒にいたいのになー」と、市ノ瀬くんは呟いた。なんかくすぐったいな、そういう風に言われるの。
そういえば、と、ぼんやり思い出した。市ノ瀬くんに男の子と話さなくなった理由を話すって言って、伝えてなかったってこと。
こういうことって、タイミングがないと言いそびれてしまう。
まだ聞きたいと思ってくれているのかな。