何か飲もうかって、飲料水売り場を見ていると、市ノ瀬くんは急に「待って今日の気分、当てるから」と、棚に並ぶ飲み物と睨めっこをしだす。
「これだ。ピーチティー」と、手に取る。
「ううん」
「じゃあ、これ」と、ストレートティー。
「ううん」
「当たってるのに、ううんって言ってない?」
「い……言ってない」
結局、当てられず、ココアを手にしたらまた脱力していたから、笑った。
「羽麗ちゃんの気持ち全然わかんないなー。俺」と、わたしの手からココアを取ると、レジで一緒に買ってくれた。
「お金」と、ベンチに座って渡そうとするけど、「いいの。俺、お金持ちだから」と断られた。
今日も炭酸飲料と水曜日発売の漫画雑誌を買っていた。
「あれ。お小遣いもらってるから。肩もみ一回十円」
「それだったら余計に奢ってもらえない」
「え?本気にした?」
「……冗談……だよね」と、本気にしてしまって恥ずかしくなった。
「漫画、どうぞ」
「だから、俺が誘ったのに漫画読み始めたら意味わかんないから」
「……」
「いや責めてないよ」
「……」
「いちいち可愛いんだから」
そう言われて、ドキッとした。顔あげれなかった。
市ノ瀬くんの可愛いのツボも、全然わかんないよ。