-Ⅲ.Heart/心-


 3日目の夜。静まり返った部屋で一人、

ソファに座りぼーっとしていた。眠れていたの

かすら分からない。食欲もない。なにもする気

が起きなかった。彼女の存在は僕の命に関わっ

ているほどだった。心身共に危ない状態になっ

ていた頃、玄関の施錠が外れドアが開いた。

「ただいま!遅くなってごめんなさい、ご飯は

済んだ?今から作るね!」

彼女が帰ってきた。


 その姿も普段と変わりはなかった。僕は彼女

が無事に自分の元へ帰って来たことが今なによ

りも嬉しくて、ほほに涙を伝わせながら彼女に

抱きついた。何も言わなかった。今はこうして

いたい。何も言えなかった。