そのままぎこちない空気の中、俺たちのマンションの前に着いた。
「ね、ねぇ!今日みんな私の部屋でご飯食べて帰らない?今日鍋らしくって!」
梨華が気を使うように言う。
「いーね!梨華のお母さんの料理、俺たちもめっちゃ好き!」
駿も場を明るくしようと元気に言う。
「…みんな。ごめんなさい。
私がみんなと仲良くできるのは今日が最後です。登下校も一緒にできない。
お弁当も一緒に食べれない。だから梨華ちゃんの家の中にも入れない。本当にごめんなさい。」
「「「え?」」」
唐突な未羽の言葉に俺らは戸惑う。
「未羽?どうして?私たちなにか未羽に悪いことした?」
「そ、そうだよ未羽ちゃん!悪いことしたなら謝るからそんなこと言わないでよ」
「…ごめんなさい。梨華ちゃん、駿くん、天くん…。みんなは全然悪くないよ。私の気持ちが甘かっただけ。」
「…甘かっただけってなに?未羽ちゃん、ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ!」
駿が少し大きな声で言う。
「ごめんなさい。今はまだ言えない。
すべてが終わった時、成功した時、全部言うから…。少し待っててほしい。」
「成功した時ってなに?未羽、私未羽と一緒にいたいよ!スキー研修ももうすぐなのに。もっとたくさん思い出作りたいよ!どうしてなの?未羽…」
梨華はとうとう泣き出してしまった。
そうだ、梨華がこんなにも仲良くなった女友達は初めてかもしれない。
いつもは駿に近づくために利用されたり、私の彼氏をとった!なんて言いがかりをつけられたりしていたから。
梨華の涙を見て、未羽は苦しそうに首を振った。
「ごめんなさい…。」
「…俺たちのこと信用できないの?
俺たちにその問題共有させてよ。俺、未羽の力になりたい」
「天くん、ごめんなさい。これは私の問題なの。私が解決しなきゃいけないの」
そう言って先にマンションに入ろうとする未羽の腕を掴んだ。
「天く…」
「好きなんだよ!未羽、お前のことが」
そう、今日気付いたこと気持ち。
俺は未羽が好きだ。
誰にも渡したくない。
「ずっと笑顔にする」
「!!!!!」
未羽は目を見開いた。
そしてその目から一筋の涙がこぼれた。
「私も好きだよ」
ボソっと未羽が言った。
「!今、なんて…!」
俺が聞き終わる前に未羽は
「その気持ちには応えられない。みんな、ごめんなさい。」
と言ってマンションに入って行ってしまった。