『日野くん速い!周りの選手をどんどん追い越していきます!』


加速するアナウンスの声が聞こえた。

サプライズ借り物なんて変なものを作るから、どんな反応をすればいいのかわからないよ。

正直すぎる単純なわたしの体温は、もう既に溶けそうなほど熱い。


ドキン、ドキンと慣れない心拍数が頭に響いて落ち着かない。


こんなにドキドキしているのは、走っているからなのに。

なんでこんなにも碧人くんがキラキラして見えるんだろう。


ーーパーンッ!


『日野くん、1着でゴールです!』


不可思議な感情を募らせたまま、ほんの数10秒で碧人くんと共にゴールテープを1番で切ってしまった。

ワァッと沸き起こる歓声が自分たちに向けられたものだと思うとなんだか変に心苦しい。


「っ……はぁ………疲れた……」

「これくらいで情けないな」

「仕方ないじゃん……急に、走り出すから……」


そんなゴールテープの前で騒ぎ出す非対照なわたしたちの前に、


「1着おめでとうございます!借り物の確認をします」


1位の旗を持った女子生徒が駆け寄って来ていた。