「えっ、わたし碧人くんの借り物何か持ってる?」
周りにいる生徒たちの視線が集まって、少しだけ恥ずかしい。
「……いいから、黙って」
「……っ」
いつもより真剣な瞳を揺らす碧人くんに、またドキンと胸が高鳴った。
「行くぞ」
「えっ、ちょ……!?」
わたしの問いかけに答えないまま、何も言うなと言わんばかりに強引にわたしの腕を引っ張って、
「きゃーっ!頑張ってね芽衣子〜!!」
楽しそうに手を振る桃花に背を向けて走り出した。
「わっ……」
碧人くんの力強い手と長い脚がどんどんわたしと桃花の距離を離していく。
碧人くんが走るの速すぎて心臓潰れそうだし、息苦しいし、なぜかわたしを引っ張ってるし。
「はぁ……っ……」
聞きたいことがあっても呼吸が乱れて声が上手く出せない。
でも、もしかしてこれって………。
ーー「あ、わかった!きっと『好きな人』だよ!」
ついさっき聞いたばかりの桃花の言葉が頭を過った。
いやいや、ありえない。
そんなわけ、ないよね。