いくら自分を納得させようと理由をつけても本当の気持ちは隠せない。


「記憶を失っていた頃の記憶なんて、今の碧人くんには必要ないですから……」


口にするセリフも全て偽りの言葉。


「碧人くんと一緒に居られてすごく楽しかったです」


もう終わり。

わたしも夢を見ていたんだと思えばそれでいいでしょ?


「今までありがとう、ございました………」


僅かなひと言も酷く震えていて、本当は今すぐにでも泣き叫んでしまいたかった。


「それじゃあ、わたしはこれで」

「あっ、もう遅い時間だし送って行くわ」

「タクシーで帰るんで大丈夫ですよ。碧人くんにはお大事にって伝えておいてください」


「芽衣子ちゃ………!」


ーバタンッ

最後に聞こえた北上さんの声は聞こえないふりをして、早足に部屋の扉を閉めた。