「………謝らないでください!わたしは碧人くんの記憶が戻ってほしいってずっと思っていたので………」
そうだよ、わたしは自らこの未来を望んだんじゃない。
あんなに必死になって碧人くんの記憶を取り戻そうとしていたのに、結果が気に入らないからって受け入れないでどうするの?
これは変えることのできない現実。
抵抗したところで碧人くんと過ごした日々が戻るわけでもない。
だったらさ……受け入れるしかないじゃん。
「碧人くんの記憶が戻るように変な作戦をいっぱい考えたりもしたんですよ。どれも失敗ばかりで上手くいかなかったんですけどね」
いつの間にか自然と笑顔が作れていた。
溢れそうになっていた涙は乾き、今は平然と笑っていられる。
当然、嘘で塗り固められた作り笑顔にすぎないけれど。
「二宮さん、あのっ………」
「後悔なんてありません!」
碧人くんのお母さんの言葉を遮るように、無理矢理声をあげた。
こうでもしないとせっかくの笑顔が壊れてしまうから。
碧人くんのお母さんは優しくて素敵な人だっから、きっとわたしのことを心配してくれてるんだと思う。
そんな優しい声を掛けられたら、本音が溢れてしまいそうだもの。