部屋に取り残されてどうしたらいいのかわからなったけれど。
「…………二宮さん」
そんな重苦しい空気が漂う中、碧人くんのお母さんが口を開いた。
「はい……」
自分でも喋っているかどうか、わからないくらいの小さな声だった。
上手く声が出ない。
これ以上喋ったら泣いてしまいそう。
グッと瞳に力を込めて碧人くんのお母さんに視線を向けると、申し訳なさそうな顔をしながら俯いているのが見える。
こんな暗い表情の後に良い話をされるわけがない。
良くない話をされるのだと理解できると、いくつか気持ちが楽になれた。
変な期待をしなくて済むから……。
「記憶が戻っても碧人と仲良くしてほしいなんて、軽はずみなことを言ってしまってごめんなさいね。
せっかく仲良くしてくれていたのにこんな終わり方になってしまって………」
目に涙を浮かべながら話す碧人くんのお母さんを見ていると、自分がどれだけ部外者だったのかを思い知らされた。
記憶を失っていた頃の記憶はこれからの碧人くんの未来に必要ない。
『ーーこんな終わり方』
その言葉はまるで、わたしと碧人くんは終わった関係なんだと教えられたような気がした。