「先生見たくないん?」

揺れている僕にさらに伊東がたたみかける。

研究室の窓からは、河川敷に向かうんであろう、浴衣姿のカップルや子供たちがはしゃいでいるのが見える。


「今年の夏休みなんにも夏休みしてないまま終わるんかぁ」

わざとらしくため息をついて、解くつもりもないだろう問題に目を落とす。


「花火大会屋上から見ていいなら、明日からもっと化学がんばるからっ」

この通りっとわざとらしく顔の前で手を合わせる。


それが悔しいくらいかわいい。