僕は、彼氏と花火大会に行く伊東を想像せずにすむから、むしろありがたいのだけど。

伊東の機嫌はなおらないらしい。


「あと一時間ではじまるよ?」

「音はここでも聞こえるよ」

「音だけじゃいや!見たいの!花火見たい!今年勉強しかしてない!」


地元の国公立の教育大を目指している伊東は、夏休み休む暇もなく、ずっと塾通いだったらしい。


「花火ー」

悲しそうな声をだして机に突っ伏す。


そのしぐさはすごくかわいいのだけど、学校の決まりだから仕方ない。