「やっぱ最近ふさぎこんでるし、先輩に相談したほうがいいかもなぁ」

「去年の卒業生?」

この時は、なんの気もなしに聞いたこの質問が、自分の首をしめつけることになるなんて、僕は思いもしなかった。

「先生知らないの?」

九条が少し顔をゆるめる。

「何が?」

僕の反応を見て何も知らないらしいと判断した九条は、僕に耳打ちしてくれた。

「伊東去年卒業した軽音部の先輩と付き合ってるんです。もう一年くらいになるんちゃうかなぁ」


そこから何やら九条がいう声が聞こえたけど、完全に僕の頭には入ってこなかった。