スーツで全力疾走する僕を道行く人が好奇の目で見る。

けど、そんなこと気にしている場合じゃない。


校門から少し走ったところで、遠くのほうに、伊東らしき後ろ姿が見えた。


「伊東!」


息がきれて苦しい。それでもできるだけ大きな声で叫んだ。


「伊東!とまれ!」


伊東が驚いたように足を止める。周りの人はなにごとかと、注目している。


やっと追いついて、僕は足を止めた。


「はぁ、やっと、やっと見つけた。」


伊東は目をまんまるにして、僕を見ていた。