使ってみると、タカヤは従順だった。
たいていのチンピラは、金で割り切る分生意気な口もきくが、タカヤは沼田の命令には逆らわない。
拾われた時点で、沼田を主人だと思い込んでいるのかもしれない。
こいつを売って来い、と、金魚型のしょうゆ入れに詰めた、透明な薬をひとつかみ渡した。
Tシャツにジーンズにキャップ、と、恰好だけは渋谷の人混みにもまぎれられそうになったタカヤは、掌に乗せられた金魚のひとつをつまみあげて、不思議そうに蛍光灯にかざした。
「これ、なぁに?」
「いい夢が見れる薬だよ。言っとくが、交じりっけなしの高級品だからな。買いたたかれるんじゃねぇぞ」
「夢……?」
金魚を見つめていたタカヤが、にへら、と、笑う。
「いいなぁ」
「そいつをちょろまかしたりしたら、ぶん殴るぞ。俺はそんなもんより、現金のほうがいい夢見れるんだよ」