床に散らばった金魚を、ひとつずつつまみ上げる。


「沼田さん」

「病院に行く必要はありませんや。これくらい、今までだって経験がある。やばいかどうかは、自分の身体だから自分でわかる。
……それより、タカヤをお願いします。今頃、泣いているかもしれない」


自分はひとりぼっちなのだと。
また、捨てられてしまったのだと。


おそらく、これまで捨てられるばかりの人生だったタカヤ。

本当なら、沼田自身が側に居てやりたかった。

だが、それができないことを、今はもう理解している。


拾い集めた金魚を、携帯電話の横に落とす。
そうして沼田は、初めてまっすぐに萩を見た。


「タカヤを、よろしくお願いします」


今度こそ、捨てられることはないのだと。
タカヤのことを思い、気遣う人間がいるのだと。

タカヤが安心できるように、生きていけるように。
あんたたちなら、道を整えてくれるだろう。

これだけは、まっとうな善人にしてもらうほうが、いいに決まっている。