その顔色の悪さに、沼田は手を止めた。


落ちくぼんだ目。
薄汚れた顔。
まばらに生えたままのひげ。
乾燥した唇には、かさぶたがこびりついている。


濁った目が、ゆっくりと数回瞬きをする。


そうして、ようやく視線が、沼田と重なった。


「わかるか?タカヤ」


自分の言葉の響きに、沼田は自分でたじろいだ。
こんなやさしい口調、女にだってしたことがない。

たとえば。
もしもまかり間違って、まともな生活でもしていて、家庭を持って子供でもできれば、そんな気分になるのかもしれない。


そうか。


いまさら、沼田は気づいた。
タカヤは、俺にとっては、ガキなんだ。
タカヤが、まるでインプリンティングされたひよこのように、沼田を無条件に慕うから。
こんな、沼田のせいでコカイン漬けにされて、禁断症状に苦しまされても。


今でさえ。