「もしもし」

(夜分にすみません。萩です。わかるかな、高谷君の)

「ああ、もちろんわかりますよ。先生。タカヤが、どうかしましたか」

(そちらに、高谷君が行ってないか、と思ったんですが)

「!いなくなったんですか?」

(申し訳ない。幻覚症状が軽減したので、今日から抑制を解いたんですが)


馬鹿か、あいつは。


ほんの少しの自由を与えられたとたん、逃げ出したのか。
なんのために、こっちが我慢していると思っているんだ。

(行きそうな、心当たりはないですか)

「さぁ」

言われて、沼田は気づいた。


俺は、タカヤがよく行く場所なんか、知らない。