思いかけて、自分で自分に舌打ちをする。


他人の心配をしているときじゃねぇだろうが。


他人なんか、踏み台にするためだけの存在。
利用しなければ、利用されるだけだ。


そう自分に言い聞かせて、ここまで来た。

なのに、そんな沼田の生き方を、タカヤは根こそぎひっくり返してしまった。
ただ側にいて、従順に笑っているだけで。


会いたい。


何度か浮かんだ思いを、また、沼田は打ち消す。

会うわけにはいかない。
タカヤにとって、沼田はコカインを与えてくれる存在だ。
せっかく耐えているものが、また、振り出しに戻ってしまう。

たとえ何カ月耐えても、たった一度また使用すれば、元に戻ってしまうのが覚せい剤だ。
元に戻るだけじゃない。
中毒症状は、より悪化する。


会わないことが、結局、タカヤの苦しみを減らす、沼田にできる唯一の方法だった。